「告白」
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回想
「ネコ美に告白するんだ」
心の中で何度も繰り返し自分に言い聞かせてきた言葉をまた繰り返す。
俺の名前はちゃまめ。猫学校4年生の4ヵ月のオスだ。
俺には好きな子がいる。
この学校の入学式で一目見て心を奪われた。
透き通った瞳、綺麗に伸びたヒゲ、均等に整列したかのような毛並み。
どれをとっても非の打ちどころがない彼女はネズミにも詳しくて、
座った時の膝の角度もいい。寝そべった時の前足の揃え方も上品だ。
「いつか彼女に俺の気持ちを伝えるんだ。」
俺は心に強く誓い、今日も学校へ行く。
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学校
「ネコ美は好きな子いないの?」
不意に聞こえたモブ美の言葉が耳に入る。
自然と息を潜め、ばれる筈がないのに自然と鼓動が早くなる。
「えー、いないよ。ほら私は目立たないし、そうだなー、ネズミは好きだよ。」
「ネズミはみんな好きじゃん。つまんないなー。今しか青春できないんだよ。謳歌しないと。」
「ふふふ。モブ美はいつも楽しそうだね。」
「当たり前じゃん。いつかネズミをたくさん捕まえられる旦那さん見つけて、
玉の輿に乗ってやるんだから!」
ネコ美ちゃん、ネズミ好きなんだ。俺も好きだ。
告白の時には、ネズミをプレゼントしよう。
てか、好きな人いないのか。
ネコ美に好きな人がいないことに安堵すると同時に、
少し寂しい気持ちになるのはなぜだろう。
彼女の本心はわからないけど、頭の片隅には俺はいるのかな。
ちゃまめは感情を押し込め、教室へと向かった。
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教室
「おはよう、ちゃまめ。今日も難しい顔してんな。」
こいつは幼馴染のネコ男。いつも煩いけど、気のいいやつだ。
「ほっとけよ。こういう顔なんだよ。」
「だな。お前はそういう顔だった。」
くだらないやり取りをしながら自分の席へ向かう。
「そういや、明日は体育祭だな。お前何に出るんだっけ。」
「俺は借り物競争。」
「なんで借り物競争?」
「知らない。勝手に決まってたんだよ。」
「なんでだよ。お前が種目決めの時に寝てたのが悪いんだぞ。」
「わかってるよ。」
正直、体力には自信がある。借り物競争なんて誰も注目してないし、
変な借り物にならなければ大丈夫だろう。
俺はそんなことを考えながら今日を過ごした。
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体育祭当日
「借り物競争に出場する人はこちらに並んでくださーい。」
もうそんな時間か。
俺は空を眺めながら、声のほうへと向かった。
「ネコ美ちゃん……」
「あ、ちゃまめくん。ちゃまめくん、借り物競争なんだ。
私実行委員なんだ。ゴールにいるから借り物見つけられたら
私に渡してね。確認するから。」
「う、うん。わかったよ。」
ネコ美ちゃんが実行委員!?
知らなかった。クラスも違うし、当然か。
しかし、ネコ美ちゃんが実行委員なら恥ずかしい順位はだめだ。
本気でやるしかない。
ちゃまめは静かに燃えていた。
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借り物競争
「位置について。よーい、ドン!」
空砲が鳴り響く。
俺は地面を自慢の4本の足で強く蹴った。
良し、いい出だしだ。
ちゃまめは1番に借り物が書いてある場所へ到達した。
「よし、いい感じだ。どれどれ、俺が借りてくるものは、っと。」
“ネズミ”
「ネズミ!?正気か!?
近年地域の清掃員が本気だして掃除してるから、
あいつらほとんど見かけないんだよ。
最悪だな。終わった。最下位本命になっちまった。」
内心諦めかけた俺だったが、ふと閃いた。
「待てよ。これは、チャンスなんじゃないか。」
俺の頭の中にあの時の言葉がフラッシュバックする。
ネコ美「ネズミは好きだよ。」
「これだ!
それにネコ美ちゃんは実行委員でゴールで確認する役目。
近年手に入りにくいネズミを捕まえて、ゴールにはネコ美ちゃん。
やるしかねえ。この状況ならいける。
ネズミを捕まえて、ネコ美ちゃんにそのままプレゼント。
いける。告白するしかない!」
ちゃまめは走った。
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借り物競争2
「はぁ、はぁ、どこにいるんだよ。」
俺は1時間以上全力疾走を続けていた。
体は悲鳴を上げ、普段は出ない汗まで出てきた。
「くそー。そんな甘くないよなー。
てか清掃員綺麗にし過ぎなんだよ。はぁー。」
半ば諦めかけた俺だったが、
目の前を黒い影が横切った。
「なんだいまの。何かが横切ったような…。」
俺は目を凝らして動いたものにピントを合わせた。
「…….いる。あいつだ。やつがいる!
たぶんこの町の最後の生き残りだ!
待て!」
ネズミはちゃまめの追跡を振り切り、
ある家の中へ逃げ込んだ。
「家に逃げ込みやがった。
いや、窓が開いてる。そこから入れるな。
よし、追い詰めたぞ。」
ネズミはある家の一室、椅子の下に逃げ込んでいた。
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結末
「追い詰めたぞ。観念しろ。」
ちゃまめはネズミが逃げないようにゆっくり、
退路を塞ぎながら近づいた。
ネズミも必死に逃げ道を探すが見つからない。
ネズミは決死の覚悟でちゃまめの横を強行突破しようとした。
「そう来ると思ったぜ。
お前には悪いが俺はネコ美ちゃんに喜んで欲しいんだー!!!!」
あたりは静まり返り、ちゃまめのみが動いていた。
「はぁ、捕まえたぞ。やっと捕まえた。
ネコ美ちゃん、、、待っててくれ。
今君に伝えたい言葉があるんだ。」
「カシャ」←この場面